芥川受賞作家田中慎弥の最新作である。あの有名な芥川受賞時の言動(くれるんならもらっといてやる)は数回落とされての腹いせ?そんな作者の反骨精神溢れる暗黒寓話な物語。作家Tが宰相Aに屈服するとてもとても悲しいお話である。しかももう日本はとんでもない国家になっていた。これからの日本を垣間見るような見ないような悲しい悲しい物語だ。この小説のような日本になったらどうしょう。魔術的リアリズムにしてはリアリティを描くよりは作者と重なる作家Tの述懐がクドいほど執拗である。傑出はやはりあの総理モデルの宰相Aの描写である。読みながら仰け反りその反動でくの字に腹部を抱えながら大声すら出してしまうほどに笑い転げた。日本の行く末を暗示明治洞察する先読みなストーリーであるけれどあまりにも政治や社会や時代が表層的過ぎて却って皮相的だ。作家の文学的イマジネーションがこれではやはり寂しい。結局、物語は洗脳されて御用作家に成り果てる自らの行く末すら暗示して後味はかなり悪いし暗然となる。反知性主義な言説が大きな運動に加速する前に何とかしたいけどどうする?みたいな思考停止に陥らない為にもこんな小説の一つでも読みながら村上春樹じゃないけど小説を読む事で嘘にだまされない識字力を鍛えるのもいいだろう。
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