2015年2月25日水曜日

曇天の猫ちゃん「いのちの姿」宮本輝を読む


 曇天である。大学入試も終盤のようだ。
「いのちの姿」宮本輝著を読了した。珍しいエッセイ集である。あとがきにもあるように既存の出版メディアではなく京都の料亭高台寺和久デンの大女将である桑村綾さんからエッセイ誌を創刊するに際して依頼され寄稿したエッセイ集である。なので読者は料亭のお客様である。年二回の執筆期間も丁度いい案配だったのではないか。作家は締め切りの制約でどうしても時間の奴隷になりやすい。御題テーマも字数も自由というある意味、商業的制約から解放された作家の本性が垣間見れる執筆環境でもある。
 平易な文体が魅力の宮本輝であるが創作の楽屋裏のような興味深い記述も多く面白く読み終えた。希代のストーリーテーラーということで物語造形つまり作話の名手としての内輪話も面白い。例えば登場人物に作者は憑依するという。原型の基本モデルも存在するという。物語と小説の自動性はどう連関するのだろう。プロットから細部を詳述する物語の創作手順が実は物語の拘束的な想像性を不自由にしていないかという問題提起もある筈だ。作為と人為な物語はやはりつまらない。自在な小説、想像力の芳醇な小説を読みたい。宮本輝の小説は面白い。









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